ⓔコラム17-8-1 固形臓器移植と造血幹細胞移植 (HSCT) の違い

 固形臓器移植 (心移植,肝移植,腎移植など) では患者の免疫系のなかにドナーの臓器が移植されるため,患者から移植片に対する一方的 (拒絶方向) な免疫反応を生じる (図1).一方,造血幹細胞移植においては,患者から移植片の方向と,移植片から患者への双方向の免疫反応が生じる.まず,患者の免疫力がドナー造血細胞を攻撃する免疫反応が生じるが,患者免疫力は大量抗癌薬や全身放射線照射を用いた移植前処置によって強力に抑制されているため,移植片拒絶の頻度は低い.したがって,ドナー造血細胞は患者に生着し,次に移植片,特にドナーリンパ球が患者臓器を攻撃する移植片対宿主病 (graft–versus–host disease: GVHD) を生じる.そのため,造血幹細胞移植における免疫抑制療法の主目的はGVHDの予防であり,この点は移植片拒絶の予防を目的として免疫抑制療法が行われる固形臓器移植との大きな違いである (図1).また,造血幹細胞移植においては免疫系そのものがドナー細胞に置換されるということも重要な相違点である.造血幹細胞移植では,移植されたドナー免疫細胞と患者臓器はやがて免疫学的に寛容状態になり,多くの場合,長期的には免疫抑制薬を完全に中止することが可能となる.

図1 HSCTと固形臓器移植での免疫反応の違い.

〔神田善伸〕